元社員を再雇用する際の「勤続年数」はどう扱う?~トラブルを防ぐ実務対応~

(相談)
当社では、一度退職した元社員を再雇用する予定ですが、本人から「前回退職時は勤続年数不足で退職金が支給されなかったため、次回退職時には以前の勤続年数も通算してほしい」との要望を受けています。会社として、以前の勤続年数を通算しなければならない法的義務があるのでしょうか。

(回答)

1 「勤続年数」が経営に与える重み
 日本企業では現在でも長期雇用を前提とした制度設計が多く、勤続年数は年次有給休暇、退職金、昇給・勤続給、休職期間、永年勤続表彰、役職への登用条件など、様々な労働条件の基礎となっています。
そのため、以前の勤続年数を通算するか否かは単なる数字の問題ではなく、会社の人件費や組織間の公平性にも大きく影響します。

2 法的な原則は「新しい雇用契約」
  定年後の再雇用や契約更新のように、実態として雇用が途切れていない場合は継続性が認められますが、一度完全に自己都合などで退職し、転職等を経て戻る場合は、以前の期間を引き継ぐ義務はないと解釈するのが一般的です。
  つまり、一度退職した時点で、以前の労働契約は終了しており、その後の再入社は、法的には「全く新しい雇用契約」とみなされます。したがって、「以前当社で働いていた」という事実だけで、当然に勤続年数が引き継がれるわけではありません。

3 例外的に通算が必要となるケース
  もっとも、形式上は退職していても、実態として継続雇用に近い場合は別です。会社都合で形式的に退職扱いにした場合や、短期間での再雇用が当初から予定されていた事情がある場合などがこれに当たります。
また、就業規則に「再入社時は一定条件で勤続年数を通算する」と定めている場合や、採用時に会社側が通算を約束していた場合には、その内容に会社は拘束されます。
特に、中小企業で特に注意すべきは「過去の運用」です。以前に同様のケースで通算を認めていた実績があるなら、今回の社員だけ否定することは不合理な差別とみなされ、労務トラブルにつながる可能性があります。

4 退職金制度は特に慎重な整理を
  退職金については、前回退職時に既に支払済みである場合、再入社後に過去勤続を全面的に加算すると、同じ勤続期間を二重に評価する問題が生じます。
そのため、仮に勤続年数の通算を認める場合でも、「既払退職金を控除する」「前回勤続分は退職金算定から除外する」といった調整を行うことが通例です。前回不支給であったケースでも、通算によって将来の退職金原資が急増するため、計算式の重みをどう設計するか、事前の精査が欠かせません。

5 まとめ
 再雇用をめぐるトラブルの多くは、経営者の善意が「特別扱い」と受け取られることから始まります。
まずは原則不通算を土台とし、通算を認める条件や対象項目を就業規則へ明確に落とし込んでください。特に退職金などの金銭面は、再入社時の契約書において過去の期間をどう扱うか、本人と書面で合意しておく必要があります。
即戦力の復帰を組織のプラスにするには、場当たり的な判断を捨て、ルールの透明性を確保することに尽きます。もし過去の運用との整合性や、具体的な条項案の作成に不安がある場合には、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。