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災害と法律①

(質問)
近年,豪雨災害による甚大な災害が立て続けに発生しておりますが,災害時に役立つ法律はあるのでしょうか?

(回答)

1 罹災証明書
罹災証明書とは,市町村が被災者の申請により,住家の被害状況の調査を行い,その結果発行する被害の程度を証明する書面のことをいいます(災害対策基本法90条の2)。
 罹災証明書は,各種被災者支援対策適用の判断材料として活用されるものですので,とても重要な書面となります。
 さて,罹災証明書は,冒頭でもご説明したとおり,被災者からの「申請」によって発行されます。申請先は,市町村(岡山市では,各区役所や支所で受け付けているようです。)になります(火災の場合は,所管の消防署)。申請には,所定の申請書や添付書類が必要となりますので,予め,市町村に確認をするとよいでしょう。
 罹災証明書の申請がなされると,市町村は,被災した家屋の被害を調査し,被害の程度を認定します(被害認定)。被害認定は,一般的に,4区分でなされます。すなわち,全壊(50%以上),大規模半壊(40%以上50%未満),半壊(20%以上40%未満),半壊に至らないのいずれに該当するかを判断します。かかる調査を終えた後,罹災証明書が発行されます。
 罹災証明書は,今後の支援策を受ける上での重要な書類ですので,仮に,被害認定結果に納得ができなければ,再調査を依頼するとよいでしょう。また,被災から時間が経過すると,どこまでが災害によってもたらされた結果が分かりにくくなりますので,被災直後の家屋の写真等を撮影しておくと良いと思われます(なお,罹災証明書の添付書類として,被災した家屋の写真を要求されることが多いと思われます。)。

2 被災者生活再生支援制度
被災者生活再建支援法という法律があり,自然災害により,その生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対し,支援金を支給することにより,被災者の生活再建を支援するとされています。
 同法の対象となる自然災害は,同法施行令により詳細に定められていますが(10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等),同法が適用されれば,一定の支援金が支給されます。具体的には,次のとおりとなります。
【対象となる被災世帯】
①自然災害により,住宅が全壊した世帯
②自然災害により,住宅が半壊し,又は住宅の敷地に被害が生じ,その住宅をやむを得ず解体した世帯
③自然災害により,災害による危険な状態が継続し,住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④自然災害により,住宅が半壊し,大規模な修補を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)
【支援金の支給額】
 以下の2つの支援金の合計額が支給されます。
①基礎支援金
全壊(要件①)-100万円
解体(要件②)-100万円
長期避難(要件③)-100万円
大規模半壊(要件④)-50万円
②加算支援金(住宅の再建方法に応じて支給される支援金)
建設・購入-200万円
補修-100万円
賃貸(公営住宅以外)-50万円
【申請方法等】
 支援金の申請は,市町村に対して行う必要があります。申請書やこれに添付する資料(罹災証明書,住民票等)の詳細については,市町村にお問い合わせ下さい。
 添付資料として,住民票が必要なのは,支援金が「世帯」に対して交付されるからです。原則として,世帯は住民票を基準に認定されますが,他の資料により認定されることもありますので,必要とあらば,行政に相談されると良いでしょう。
 また,支援金の支給の有無や支給金額は,原則として,罹災証明書の被害認定によって決まりますので,ここにおいても,罹災証明書の重要性をご理解頂けると思います。
 そして,ご注意を頂きたいのが,支援金の申請には期限があるということです。支援金のうち,基礎支援金については,災害発生日から13ヶ月以内,加算支援金については,災害発生日から37ヶ月以内に申請をする必要があります。大規模な災害の場合,申請期間が延長されることもありますが,申請期限が延長される保証はありませんので,先に述べた申請期限内に申請をすべきです。

3 義援金
災害が発生すると,日本赤十字社などを通じて寄せられた義援金が被災者に配分されます。そのときも,罹災証明書の被害区分に応じて,一定の金額が支払われます。