月別アーカイブ: 2026年2月

「女性だけ転勤なし」は違法?-女性管理職を増やしたい中小企業の法的対策

(相談)
 当社では優秀な女性社員がいるのですが、「子育てで忙しい」「管理職の責任が重い」などを理由に昇進を辞退されることが多く、女性管理職がほとんどいません。
 人材不足の中で女性の力を活用したいのですが、女性だけに有利な条件(転勤なし、残業制限など)を設けることは法的に問題ないでしょうか。

(回答)

1 「30%目標」の現実は11%の厳しい実情
 政府が掲げる「女性管理職30%」の目標に対し、現実は11.1%(令和7年)という厳しい状況です。
 特に中小企業では、限られた管理職ポストの中で女性登用の難しさが際立っています。
 しかし人材不足が深刻化する中、女性人材の活用は競争力確保の重要な鍵となっており、適切な法的対応が求められています。

2 「女性だけ優遇」が認められる法的根拠
 実は、男女雇用機会均等法第8条により、一定条件下で女性を有利に取り扱う「ポジティブ・アクション」が認められています。
 適用条件は明確です。
 当該職種や管理職において女性の割合が4割を下回る場合、女性のみを対象とした措置が可能となります。
 転勤免除や残業時間制限なども、適切に設計すれば合法的に実施できます。
 ただし重要なのは、単に「女性を増やしたい」だけでは不十分で、これまでの企業慣行が原因で生じた男女格差の解消が目的である必要があることです。

3 実施時に絶対避けたい3つの「落とし穴」
⑴ 現状分析なしの見切り発車
 なぜ女性管理職が少ないのか具体的理由を把握せずに制度導入すると、効果が出ないだけでなく法的リスクも高まります。
 まず過去の昇進実績や辞退理由を数値で整理し、構造的な問題を特定することが必要です。
⑵ 男性社員への説明不足
 女性優遇措置について背景や目的を説明しないと、逆差別クレームや職場の雰囲気悪化を招きます。
 全社員に現状データを示して説明し、「一時的な格差是正措置」であることを明確に伝えましょう。
⑶ 賃金格差の見落とし
 転勤免除により出張手当対象外となるなど、結果的に賃金格差が生じると労働基準法違反の可能性があります。
 手当の支給基準や昇格要件を事前に精査し、不利益が生じない制度設計が重要です。

4 中小企業だからできる!機動力を活かした成功戦略
 中小企業の強みは、社長の決断で迅速に変われることです。
 まず既存の女性社員に率直に聞いてみましょう。
 「何が昇進の障害になっているか」を。
 多くの場合、制度より「長時間労働が当たり前」という組織文化が最大の障壁です。
 働き方改革と一体で進めることが成功の秘訣です。
 段階的アプローチも効果的。
 いきなり管理職ではなく、プロジェクトリーダーなど中間ポジションで経験を積んでもらう方法もあります。

5 「コスト」ではなく「投資」として考える
 女性管理職登用は法的要請への対応という受身の取組みではなく、企業成長を支える戦略的投資です。
 多様な視点による意思決定で、サービス向上や新アイデア創出につながります。
 また若手採用でも、女性活躍の職場環境は重要な選択要因となっています。
 取引先でも女性活躍推進が重視される傾向が強まっており、先行的取組みは新たなビジネス機会獲得の可能性も秘めています。

5 まとめ
 完璧な制度を一度に構築する必要はありません。
 小さな改善を積み重ね、組織文化を段階的に変革していくことが成功への道筋です。
 重要なのは、自社の実情に応じた現実的アプローチの採用と、全社員の理解を得ながら進めることです。
 適切なリスク管理により、多様性ある働きやすい職場環境の実現につながるでしょう。
 人事制度や女性活躍推進でお悩みの方は、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。