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有価証券の取得を勧誘する際の規制について

(質問)
 当社は、資金調達のために、株式を新たに発行することを考えています。そこで、当社は、少しでも多数の方に取得していただくため、少なくとも50名以上の方に当該株式の取得について勧誘を行うことにしました。
 この場合、どのようなことに注意する必要があるでしょうか。

(回答)

1 有価証券の募集とは?
金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)における有価証券の募集とは、新たに発行される株式等の有価証券の取得の申込みの勧誘行為(以下「取得勧誘」といいます。)のうち、一定の要件を満たすものをいいます。50名以上の方を対象として取得勧誘を行う場合には、一定の例外はあるものの、原則として、有価証券の募集に該当すると考えられます。
このように、有価証券の募集は、取得勧誘を前提とするものですが、どのような行為が取得勧誘に該当するかについては、金商法において明確に定義されていません。もっとも、一般的には、投資を考えている方に対し、特定の有価証券の存在を示して関心を持たせ、その有価証券に対して投資する意欲が湧くように導く行為のことをいうと考えられます。
ご相談の場合も、勧誘の態様次第にはなりますが、貴社の行為が有価証券の募集に該当することになる可能性は十分に考えられます。

2 有価証券の募集を行う際にはどのようなことに注意すればいい?
有価証券の募集を行うにあたっては、有価証券の発行者が、事前に有価証券届出書を内閣総理大臣に提出している必要があります(金商法第4条第1項)。そのため、有価証券の募集を行う際には、このような規制を考慮し、いつ有価証券届出書を提出することができるかのスケジュールを考慮する必要があります。

3 有価証券届出書を提出しないで有価証券の募集を行うとどうなる?
有価証券届出書を提出する前に有価証券の募集を行ってしまった場合には、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処せされ、又はこれが併科されることになります(金商法第197条の2第1号)。このように、有価証券届出書を提出する前に有価証券の募集を行ってしまうと、刑罰が科されるリスクがあります。
また、有価証券届出書を提出する前に有価証券の募集を行ったことで投資者が有価証券を取得した場合、その態様にもよりますが、当該取得が無効であると判断されるリスクも考えられます。
そして、金商法に違反したということが新聞等で報道された場合、会社の信用に悪影響が出るリスクが考えられます。

4 金商法等の法律を意識する必要性
会社を経営していくにあたっては資金調達も必要になるところ、規制に違反しないで行っていくためには、金商法等の法律の内容を意識する必要があります。
今日の社会ではコンプライアンスが強く求められる以上、法律に違反した場合には、会社の経営に重大な支障が生じることにつながりかねません。そして、法律は、金商法のみならず、民法、会社法、労働基準法など様々なものが存在しています。
これから行おうとする行為が何らかの法律に違反していないか、どのように行えば法律に違反しないで行うことができるかなどについてお悩みの場合には、弁護士などの専門家にご相談することをお勧めします。