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知って守ってフリーランス新法-企業に与えるインパクト-

(質問)
 令和5年5月に公布されたいわゆるフリーランス新法が、令和6年11月に施行予定であると聞きました。
 フリーランスに業務を委託することがある企業として、注意すべき点を教えてください。

(回答)

1 そもそもフリーランスとは?
 皆さん、「フリーランス」という働き方をご存じでしょうか。
 フリーランスとは、特定の企業に属さず、自身の専門スキルを活かして複数のクライアントと直接業務委託契約を結び、独立して仕事を行う働き方のこと又はそのような働き方をする者をいいます。
 クリエイティブ分野のライターやデザイナー、IT業界のプログラマーやエンジニア、コンサルタントや個人講師、独立した士業など、フリーランスの世界は多岐にわたります。
 この働き方は高い自由度が魅力ですが、収入の不安定さや社会保障面での課題もあります。
 そのため、フリーランスの保護のあり方が長年政府で議論されてきました。

2 フリーランス新法の概要
 そのような中、フリーランスと委託者間の取引適正化と就業環境整備を目的に、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が制定されました。
 本法は「特定受託事業者」(フリーランス)を、従業員のいない個人事業主や、代表者以外に役員・従業員のいない法人で業務委託を受ける事業者と定義しています。
 このように、フリーランス新法は、多様な業種・形態のフリーランスを広く保護対象としています。
 このことから、本法は下請法や労働法規制に精通した大企業よりも、従来は下請法の規制を受けなかった中小企業により大きな影響を与えると予想されます。

3 フリーランス新法の内容
では、フリーランス新法の具体的な内容についてみていきましょう。
⑴ 下請法と同様の規制
委託者は、
①契約条件明示:フリーランスに業務委託後、委託者名、日付、業務内容、報酬額、支払期日等を含めた契約条件を直ちに書面や電磁的方法で明示しなければなりません。
②報酬支払期限:給付受領日から60日以内、再委託の場合は元委託支払期日から30日以内に報酬を支払わなければなりません。
③不当な報酬減額等の禁止:フリーランスの責任によらない報酬減額、受領拒否、返品等はできません。
 また、著しく低い報酬の設定(買いたたき)もできません。

⑵ 労働者類似の保護
委託者は、
①契約解除・不更新の予告:フリーランスと6か月以上継続する業務委託をしている場合、当該契約を解除するとき解除又は契約を更新しないときは、その30日前までには予告しなければなりません。
②ハラスメント防止措置:フリーランスに対するセクハラ、パワハラ及びマタハラに関する相談体制と適切な対応措置を整備しなければなりません。
③育児・介護等への配慮:フリーランスの申し出に応じ、妊娠、出産、育児及び介護と業務の両立に必要な配慮を行わなければなりません。
④募集情報の的確表示:フリーランスの募集情報を提供する際は、虚偽表示や誤解  を招く表示を避け、正確で最新の情報を提供しなければなりません。

4 法律違反への制裁
 委託者にフリーランス新法違反の疑いがある場合、フリーランスは行政機関にその旨を申告することができます。
 公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働大臣が段階的に対応し、助言指導から始まり、必要に応じて勧告、命令、公表へと進みます。最終的に命令違反には上限50万円の罰金刑があります。
 ただし、このシステムには行政リソースの制約があるため、全案件への対応は困難であると考えられます。
 そのため、民事訴訟等の私法上の解決手段も重要な役割を果たすことになるのではないでしょうか。

5 まとめ
 デジタル化とリモートワークの広がりにより、フリーランスの重要性が高まっています。
 彼らの権利保護と才能活用のための環境整備は、日本の労働市場の重要課題です。
 フリーランス新法はこの環境整備を目指していますが、まだ過渡期で課題も多く残っています。
 法の適用や解釈に不安がある場合は、弁護士等の専門家への相談をお勧めします。