先日、労働基準監督署から突然調査依頼の通知が届きました。
当社では労働災害の発生歴もなく、調査対象となる法令違反等の心当たりがありません。
このような調査は初めての経験で戸惑っています。
どのように対応すれば良いのでしょうか。
会社を守るための対応策を教えてください。
(回答)
新年度を迎え、新入社員を迎える企業も多いことと思います。
人事異動や組織変更など、会社にとっても大きな変化の時期ではないでしょうか。
新たな気持ちで心機一転、この機会に労務管理体制の見直しをされてはいかがでしょう。
実は毎年この時期、「書類の整備が不十分」という理由で労働基準監督署(労基署)の調査対象となる企業が少なくありません。
1 突然の通知に慌てないために — 労基署が狙うのはどんな会社?
労基署からの調査通知は、多くの中小企業経営者にとって「青天の霹靂」となります。
特に中小企業では、日常業務に追われる中での対応準備は容易ではありません。
労基署調査には「定期監督」と「申告監督」の2種類があります。
定期監督は法改正の内容や管内の遵法状況を踏まえ、計画的に実施される一般的な調査であるのに対し、申告監督は従業員からの内部告発や労災発生後に行われます。
2 「家族経営だから大丈夫」は危険!調査前後の実践対応術
調査に備えて、労働者名簿、賃金台帳(過去3年分)、出勤簿・タイムカード、労働条件通知書、36協定、就業規則、安全衛生関係書類などの基本書類を事前に確認しておくことが重要です。
「うちは家族的な雰囲気だから」という言い訳は、労基署の前では一文の価値もありません。
調査当日は、誠実かつ冷静な対応を心がけることが最も重要です。
調査官にとって「この会社は誠実だ」という印象を持たれることが、調査結果を左右します。
質問には正確に答え、わからないことは「確認して回答します」と伝えましょう。
「サービス残業は当たり前」といった爆弾発言や、記録と実態の乖離を示唆する危険なコメントは厳禁です。
社内の証言が食い違わないよう、事前準備も忘れずに。
3 中小企業が陥りやすい「三大地雷」と是正への道
中小企業でよく踏む「地雷」として、労働時間管理の不備、36協定の不備、賃金未払い問題があります。
労働時間管理については、客観的な記録システムの導入や管理職による現認が効果的です。
36協定に関しては、毎年の更新と届出の管理体制構築や、適切な従業員代表選出手続きの文書化が重要です。
賃金問題については、適正な労働時間管理に基づく賃金計算と割増賃金の計算方法の再確認が不可欠です。
是正勧告を受けた場合は、その内容を正確に理解し、必要に応じて専門家に相談しながら、期限内に是正措置を実施して報告することが求められます。
対応が不十分だと再監督や送検につながる可能性があり、悪質と判断されれば事業主名の公表や刑事罰の対象となることもあります。
この「ピンチ」を「チャンス」に変えるためには、根本的な労務管理の見直しが不可欠です。
4 「雨降って地固まる」— 調査を組織強化に活かす秘訣
予防策としては、定期的な労務管理状況の自己点検、従業員相談窓口の設置、労働法令改正情報の収集が効果的です。
また、顧問弁護士・社労士との定期的な相談や、業界団体の研修・情報提供の活用も重要な予防策となります。
労基署調査は「敵襲」ではなく、適正な労働環境確保のための「健康診断」と捉えましょう。
特に人手不足が深刻な中小企業では、法令遵守による「働きやすい職場づくり」が人材確保の強みとなります。
日頃から適切な労務管理を行い、従業員と共に成長できる職場環境を目指しましょう。
労基署対応についてお悩みの方は、弁護士等の専門家にご相談されることをおすすめします。