月別アーカイブ: 2016年12月

13日間の連続勤務のリスク

(質問)  
 当社では繁忙期に人手が足りず,ある従業員が13日の連続勤務になってしまいました。
 これは違法でしょうか。

(回答)

1 繁忙期のリスク
 一般的に、企業には、繁忙期等があり、特定の時期に従業員に集中的に勤務してもらう必要が生ずる場合があります。その場合に、休日や時間外労働に関する法令に違反したり、従業員が疲労による集中力の低下に伴う労働災害を起こすなどのリスクが生じてしまいます。
 中小企業としては、繁忙期には、有期雇用のパートタイマーや派遣労働者を雇用して人材面での対応を考えるほか、変形週休制や変形労働時間を利用することを検討することになります。

2 法定休日とは
 労働基準法第35条第1項は、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」と規定しています。
 ここにいう、「毎週」とは「7日の期間毎に」の意味です。
 したがって、例えば、ある月の1日が日曜日で休日として、次の週の14日の月曜日を休日とすれば違法ではなく、12日間の連続勤務は可能になります。

3 変形週体制とは
 では、13日間の連続勤務を可能にする制度はないのでしょうか。
 同法35条第2項では、「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない」と規定されています。これは、特定の4週間において4日の休日が与えられていれば良いとの趣旨であり、これを「変形週休制」といいます。この変形週休制を利用するには、就業規則において単位となる4週間(又はそれより短い期間)の起算日を定める必要があります(同法施行規則第12条の2第2項)。
 具体的には、1か月単位の変形労働時間制であれば賃金の計算期間に合わせて起算日を定めることにより、例えば、賃金の計算が20日締めなら毎月21日が起算日になります。

4 変形労働時間とは
 ご質問は、変形週休制についてですが、中小企業の繁忙期対応のための制度として、ここで変形労働時間にも言及しておきます。
 変形労働時間制という制度を採ることにより、週40時間を超える労働時間を定めることも可能となります。
 これは一定の単位期間について、労働基準法上の労働時間の規制を、1週及び1日単位ではなく、単位期間における週当たりの平均労働時間によって考える制度です。
 具体的には、1か月単位の変形労働時間制の場合、1日~24日が1日6時間30分労働(土・日休日)、25日以降が1日9時間労働(日休日)といった方法です。

5 回答
 貴社においては、就業規則で特定の4週間について4日の休日を取るという変形週休制を採っていれば、13日の連続勤務も違法ではありません。
 逆に、就業規則に変形週休制の規定がないと、13日連続勤務は違法になります。

従業員の失踪に対する初動対応

(質問)
当社では、ある従業員が失踪してしまいました。どのように対応すれば良いでしょうか。

(回答)

1 懲戒解雇か、普通解雇か。
 中小企業では、従業員の失踪といったこともときどき起こります。失踪は無断欠勤なので、企業としては、就業規則に基づき、失踪した従業員の解雇を検討することになります。
 ところで、貴社が失踪者を懲戒解雇をするには、懲戒対象者本人に弁明の機会を与える必要があります。貴社が採りうる手段を尽くしても本人と連絡がとれない場合には、実際に本人から言い分を聞かなくても弁明の機会を与えたと評価される可能性がありますが、具体的なケースによっては、懲戒解雇が無効となるリスクを避けるため、懲戒解雇ではなく普通解雇とした方が無難な場合もあります。

2 解雇の意思表示の送達
 貴社の就業規則上、「会社の意思表示は、従業員が届け出た居所に送達されれば、従業員本人に送達されたものとみなす」等といった定めがあれば、この定めに基づいて、本人の届け出た住所に解雇通知書を送付することになります。
 従業員の失踪もリスクの一つなので、かかるリスクへの対応を就業規則に設けることが必要になります。

3 雇予告手当を支給する必要があるか。
 懲戒解雇・普通解雇ともに、解雇する際には、30日前にその予告をするか、30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
 この場合、解雇予告除外認定を利用できないかが問題となります。
 行政通達では、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤」する場合には、労働者の責に帰すべき事由に該当するとしていますので、無断欠勤が2週間以上となる場合には、労働基準監督署に解雇予告除外認定を申請することが考えられます。

4 就業規則における当然退職の定め
 以上は、失踪者に対する解雇の手続でしたが、実は従業員の失踪というリスクに対して、より簡易で効果的な対応方法があります。それは、就業規則において、無断欠勤が継続することを当然退職事由(定年到達や死亡のように、特段の意思表示なく退職となる事由)として定めることです。
そうすれば、失踪という事実により当然退職という効果が生じるので中小企業としては解雇という煩雑な法務から解放されるメリットがあります。

5 回答
 貴社の初動対応としては、まず、失踪した従業員の住所地への訪問と近所の人への事情聴取を含めた調査、身元保証人への問い合わせ、借家の場合は大家への問い合わせ、親兄弟等の親族への問い合わせ、警察への捜索願い等を行うことになります。その上で、失踪の事実が確定すれば、次の段階へと進みます。
まず、就業規則に失踪が当然退職事由になるという規定があれば、当該従業員を退職扱いとします。
次に、かかる就業規則の規定がなければ、解雇を検討することになります。