電子契約書は法的に問題ないの?

(質問)
 契約書を紙ではなく電子文書で作ることができると聞きました。電子文書で契約することは、法律的には問題ないのでしょうか。また、そうすることで、具体的にどのようなメリットがあるかを教えてください。 

(回答)

1 ペーパーレス化が再注目されている!
本年5月、衆院規則改正による国会のペーパーレス化が話題となりました。国会における議員への印刷物の配布を減らすことにより、年間で約4600万円もの国の経費が削減されると言われています。
この「ペーパーレス」という考え方は、1970年代から主に環境問題や経費削減の文脈で使われてきたものですが、実は近年、経費の削減はもちろんのこと、働き方改革との関連においても、従業員の業務を削減し企業の生産性を向上させるものとして、再注目されているのです。
「電子契約」とは、紙の文書を使用せず電子文書で契約を締結することをいい、上記のようなペーパーレス化の一環として注目を集め、大企業を中心に、中小企業にまでも普及し始めています。

2 電子契約の法的有効性
電子契約は、契約をする当事者が、契約内容の書かれた電子文書に、署名押印の代わりとなる「電子署名」と、「タイムスタンプ」とを埋め込んだものをインターネット上で取り交すことにより締結されます。
このような電子文書を用いて行う契約も、ごく一部の例外を除き、法律的には有効です。というのも、法律上、ほとんどの契約は口頭での約束のみによって締結することができるものであり、契約書は、契約をしたという事実や契約内容について後に争いが生じた場合に、その証拠としての役割を担うに過ぎないものだからです。
そして、電子契約書も、その作成の仕方次第では、紙の契約書に劣らない証拠力を持った証拠とすることができるものと考えられています。

3 メリットとデメリット
契約を電子文書で行うことの最大のメリットは、経費削減効果です。具体的には、まず、契約がコンピュータ上で完結するため、契約書の印刷や郵送にかかる費用が不要となります。また、紙の契約書の場合、収入印紙の貼付が必要ですが、電子文書で契約を締結する場合にはこれを不要とする運用がされており、印紙代についても削減することが可能です。これに加え、契約締結までの工数を削減できることにより作業効率が上がり、生産性の向上に繋がる点や、文書の管理・調査が容易になることによるコンプライアンスの向上の点などにもメリットがあるといえます。
他方、取引先への理解を得ることが難しい場合がある点や、社内においても契約業務の変更について説明や研修を行う必要がある点で、デメリットも存在します。

4 今後は電子契約が増えていく?
2018年に行われたとある調査によると、当時既に電子契約を採用していると回答した企業は約43%あり、導入の検討をしていると答えた企業を含めると、電子契約の導入に前向きな企業の割合は63%にも上るとされています。
 それと同時に、民間会社が、簡易な手続で電子契約を締結することを可能とする多様な「電子契約サービス」の提供を始めるなど、企業が電子契約を導入するハードルは年々低下しています。
 このような状況からすれば、契約書の電子化は、今後、ますます広がりをみせていくものと考えられます。取引先から「電子契約に変えませんか?」などと持ち掛けられることもあるかもしれません。
 契約書は、取引上のトラブルが生じた際、重要な証拠となるものですから、実際に電子契約を導入する際には、その仕組みや作成にかかる業務フローについて、しっかりと理解し検討することが必要です。契約書の電子化についてお悩みの方は、弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。