風評被害のリスクとプロバイダー責任法について

(質問)
 当社は,住宅の設計・施工・リフォームを主な業務としています。
 先日,インターネット上で当社のことを誹謗中傷するホームページが見付かり,プロバイダーに連絡したところ,数日後にそのホームページは削除されました。
 しかし,そのホームページは数ヶ月にわたってインターネット上にアップされていたらしく,当社は損害賠償を検討しています。
 その前提として,ホームページの開設者が誰であるかを知りたいのですが,それは可能ですか?

(回答)

1 風評被害のリスク 
 住宅の新築やリフォーム工事をどの業者に依頼するかについて,消費者がインターネット上の情報に依存する傾向は大きくなる一方です。
 そのため,ご相談内容のような営業妨害的サイトは,会社の利益を著しく害するものとして,損害賠償請求を検討せざるを得ない場合があります。

2 プロバイダー責任法 
 損害賠償請求をするには,まずそのホームページの開設者が誰であるかを知る必要があるところ,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称「プロバイダー責任法」)の第4条にその関連規定があります。
 同条は,ホームページ開設者の住所・氏名をプロバイダーが開示できる要件として,①開示請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであること,②損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他開示を受ける正当な理由があること,という2つの要件を挙げています。
 このような厳格な要件が定められているのは,簡単に開示を認めてしまうと,ホームページ開設者の表現活動が萎縮してしまい,表現の自由(憲法21条)が侵害される結果となってしまうからです。
 どのような場合に上記①及び②の要件を充たすかは,個々の事案によることになります。

3 ホームページ開設者の住所・氏名の開示が決められる場合 
 東京地裁平成18年1月30日判決は,「本件侵害情報は、原告は違法な二段階営業をしていること,原告が特定商取引法3条違反の契約の勧誘をしていること・・・などの具体的事実を摘示するものであって,原告の社会的評価を低下させるものであることは明らかである」として開示請求を認めました。
 したがって,上記①及び②の要件を充足するかの判断については,開示請求者の社会的評価を低下させる具体的事実がホームページに記載されているか否かが1つのポイントになると考えられます。
 以上の手続より,プロバイダー責任法第4条によりプロバイダーからホームページ開設者が明らかにされれば,その者に対する損害賠償請求が可能となります。