バイトテロ行為の法的責任及び対策について

(質問)
 最近,アルバイトなどの従業員が勤務先で撮影した悪ふざけの写真を,ツイッターやフェイスブックなどのSNSに投稿し,それが炎上するニュースをよく見ます。
 幸い,当社ではこのような問題は生じていませんが,いつ起こるか分からないという不安もあります。何か良い対策はあるでしょうか。

(回答)

1 バイトテロとは 
 従業員がSNS上に悪ふざけの写真を投稿し,それが流出して,雇用している企業に多大な損害を与えることが社会問題となっています。
このような事態は,アルバイトによるテロ行為ということで「バイトテロ」と呼ばれています。
 従業員の幼稚な悪ふざけ自慢がSNSを通じて拡散したことで企業ブランドが大きく傷つき,臨時休業や店舗閉鎖などに追い込まれる店舗も続出しています。
 消費者からの信頼が脅かされるだけでなく,企業の存続にも関わるこのリスクに対し,危機感をもって早急に手を打つことが必要です。

2 バイトテロ行為の法的責任 
 バイトテロとして報道された事例を一部挙げると,以下のようなものがありました。
 ①従業員が店内のアイスクリーム展示用の冷蔵庫の中に入り込み,商品の上に寝そべっている写真を投稿,②レストラン内厨房の中の業務用冷蔵庫の中に従業員が入り,顔を出している写真を投稿,③飲食店の厨房で食材をくわえたり,顔面に貼り付けたりしている写真を投稿,などです。
 このような従業員の行為は,店舗の業務を妨害するものとして,威力業務妨害罪(刑法234条)に該当し,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
 また,民事上の損害賠償責任も発生します。
 販売する商品を廃棄することになれば,当該商品の代金が損害となりますし,店舗が休業や閉店に追い込まれると,営業利益という高額の損害も生じます。
 バイトテロに関する損害賠償訴訟で,まだ確定した裁判はありませんが,今後は1000万円を超える賠償義務が認められることも予想されます。

3 事前の防止策が重要 
 仮に,従業員に対してバイトテロ行為により1000万円を超える損害賠償義務が認められても,当該従業員に資力がなければ回収ができず,絵に描いた餅にすぎません。
 このように事後的な損害賠償で対処するよりも,事前に従業員がバイトテロ行為に及ばないような対策を採ることが非常に重要です。
 バイトテロが発生する原因としては,事態の重大性や情報伝播の迅速性を考えず,安易に不適切な投稿をしたことにあるといえます。
 バイトテロ行為は,上述のような法的責任だけでなく,一度SNS上に投稿してそれが拡散されてしまうと,それが半永久的にネット上に存続することになり,プライバシーが侵害されてしまうというリスクも挙げられます。
 よって,事前の防止策としては,バイトテロ行為によって生じる個人の法的責任,プライバシーが晒されるというSNSの危険性,企業が被る損害について,徹底した従業員教育を行うことが最も重要といえるでしょう。
 その他にも,従業員が1人になる時間帯を生じさせないことや,職場への携帯電話の持ち込み禁止,監視カメラの設置等も対策として考えられます。
バイトテロ対策は,従業員だけの問題ではなく,企業の存続にも関わる重大な問題です。
 バイトテロが発生して企業に大損害が生じてからでは遅いので,事前のリスクマネジメントがますます重要になってきます。

4 業種や規模に応じた適切な防止策 
 バイトテロ対策は企業の業種や規模によっても採るべき対策が異なってくるので,事前の対策が十分であるかご心配の方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めします。