リフォーム工事において,瑕疵があるとされる場合とは

(質問)
 当社はある方から依頼を受けてアパートの改修工事を行いました。
 しかし,工事を完成して引き渡したあとに,「建物が建築基準法上の準耐火建築物になっていない。工事には瑕疵があるから損害を賠償しろ。」と言われています。
 しかし,当社が調べてみたところ,その建物は当社が工事をする前から,準耐火建築になっておらず,建築基準法違反の建物であったことが分かりました。
 当社は損害賠償責任を負担しなければならないのでしょうか。

(回答)

1 リフォームの瑕疵 
 リフォーム工事においては,当該リフォーム契約の内容となっている水準に当該リフォーム工事の内容が達していない場合に「瑕疵」があるとされます。
 したがって,貴社がその方と締結したリフォーム契約において,リフォーム工事によって準耐火建築物にするということが契約内容となっていない限り,貴社が責任負うことはありません。
 すなわち,御質問と類似のケースにおいて裁判所は,「改装工事は建物の内容や設備等を改装することによって本件建物による経営の向上を図ることを主な目的としたものであり,建物の違法部分を建築基準法令に適合させることを主な目的としたものではなかった」として,建築業者の責任を否定しています(東京地裁平成19年3月28日)。

2 注文主の指示をめぐる裁判例 
 ただし,御注意いただきたいことは,リフォーム工事は注文主の言われたとおりにすれば常に免責されるわけではないということです。
 リフォーム工事を行う前は違法ではなかった建物につき,注文者の請求するとおりに工事を行ったところ違法建築物になってしまったというケースでは,建築業者損害賠償責任が認められています(大阪地裁平成17年10月25日判決)。

 大阪地裁の事例:施工前は2階建ての建物で法令違反無し
 依頼者の要望により施工後に3階建てにすると建築基準法違反
 東京地裁の事例:施工前から準耐火建造物になっていないという違反あり
 依頼者の要望は改装により経営の向上を図ることだった火建造物でないという違反は残ったまま

 2つの裁判例から分かることは,フォーム工事契約においては,注文主が依頼した意思内容がどのようなものであるかが重視されているということです。
 すなわち,もともとは適法な建築物がリフォーム工事によって違法になっても良いというのは,とても注文主の意思とは考えられず,建築業者は責任を負います。
 大阪地裁の裁判例はこのケースです。反対に,今回の御質問のケースは,建物が違法であり,それを適法なものに直して欲しいということは注文主の意思となっていなかったからです。

3 建設業者のリスク回避対策 
 以上より,リフォーム工事においては,工事を開始する前に,当該建物には行政法規に照らして違法性がないか,注文主のリフォームの目的はどういったものかなどの点について,事前に注文主とよく話し合っておくことが肝要です。
 そして,事後的に注文主からクレームを言われるおそれがある場合には,受注する工事の内容や範囲について,明確に契約書に規定する必要があります。