ペットに関する飼い主の責任とは

(質問)
 私は犬を飼っています。散歩の途中に犬が一声吠えてしまい,通りすがりの方が驚きのあまり転倒して怪我をしてしまいました。
 この場合,飼い主である私に責任があるのでしょうか?

(回答)

1 ペットに関する飼い主の責任とは 
 飼い主はペットについて重い危険責任を負っていて,法律上も,相当の注意を払ったことを立証しなければ,責任を免れません。
 民法第718条第1項では次のとおり規定されています。
 「動物の占有者は、その動物が他人に与えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りではない。」
 この相当の注意というのは,動物の種類や性質に従って,通常払うべき程度の注意義務のことです。
 なので,①犬の種類,雄雌,年齢,②犬の性質,性癖,病気,③犬の加害前歴,④飼い主の管理の熟練度,⑤加害時の措置態度,⑥被害者の警戒心の有無,被害誘発の有無などを考慮に入れて,相当の注意を払っていたことを証明しない限り,責任を免れません。

2 今回の相談のケースでは 
 今回の相談のケースでは,犬に首輪をさせ,綱もしっかり握っていました。
 そして,犬は被害者を噛んだわけでもなく,単に一声吠えただけであっても,相当の注意を払ったことにはならないのでしょうか。
 裁判例ですが,同様のケースについて,「犬の飼い主には,犬がみだりに吠えないように調教すべき注意義務」があり,「特に,犬を散歩に連れ出す場合は,飼い主は,公道を歩行し,あるいは佇立している人に対し,犬がみだりに吠えることがないように,飼い犬を調教すべき義務を負っている。」として,飼い主の責任を認めています。
 被害者側に何らかの落ち度があった場合,例えば,犬が吠えるのを誘発するような行為をとったであるとか,履きにくいサンダルを履いていたとか,自転車に乗っていての転倒であれば,前籠にたくさん荷物を入れていてハンドル操作が難しい状況であった場合には,過失相殺され,賠償額が減額されるのが通常です。