土地の名義が100人?~所有権移転登記手続請求とは~

(質問)
 親が使っていた土地を最近相続しました。相続人は私しかいないので,当然,私の土地になると思っていましたが,登記を見てみると,100人の共有名義となっていました。この土地はどうすれば私が自由に使えるのでしょうか。

(回答)

1 時効取得を原因とする所有権移転登記手続請求 
驚くような話ですが,実際にこのような相談を受けることがあります。今までに扱ったものとしては,300人以上の名義だったこともあります。
 共有者の人数が少ない場合には,所有権(共有者の持分権)を,代償金を支払って譲渡してもらうことで解決することもあります。ところが,100人の共有名義が大昔のものであったりすると,今では共有者にも相続が発生して,その相続人が多数に上ることになります。
 このような場合には,裁判で,時効取得を原因として所有権移転登記手続を請求することが考えられます。
 もっとも,この場合でも,まずは共有者の相続人を特定することから始めなければなりませんので,戸籍を集めるのに一苦労します。そして,訴状の送達ができなければ裁判が始まりませんので,全員に訴状を送達するにも一苦労します。相続人が海外にいる場合もありますので,この場合にはさらに時間がかかります。

2 裁判の流れ
送達が完了すると,裁判が始まりますが,裁判で必ず勝てるわけではありません。
 20年の長期時効取得の場合は,その要件が民法162条1項に規定されており,①所有の意思をもって,②平穏かつ公然に,③他人の物を,④20年間占有することとなっています。①と②は民法186条1項によって主 張立証が不要となり,③は自己の所有物でもよいので要件とはなりません。④については,民法186条2項によって,20年の前後両時点の占有の事実があれば,占有はその間継続したものと推定されます。
 以上をまとめると,20年の長期時効取得を請求するには,ある時点で占有していたこと,ある時点から20年経過した時点で占有していたこと,時効援用の意思表示,の3つが主張立証できればよいことになります。
 ところが,相手方から抗弁として「所有の意思がないこと」を主張立証される可能性があります。「所有の意思がないこと」とは,(ⅰ)他主占有権原と(ⅱ)他主占有事情からなりますが,例えば,賃貸借関係があれば,他主占有権原が認められます。本件では,例えば,親が100人の共有者から本件土地を賃借して使用していた場合には,相手方からの他主占有権原の主張が通ってしまうことになり,敗訴ということになります。
 このような反論をしてくる相手方がいれば,結局,金銭解決による和解をして,登記を移転してもらうことになります。
 ほかにも,登記を放置したままでいたために,相続人が増えて大変になってしまったという事件は多くありますので,登記は早めに移転しておくことをお勧めします。