業績悪化を理由とする賞与の引下げや不支給の可能性

(質問)
 当社は、就業規則において賞与制度を定め、従業員に対して毎年2回賞与を支給してきました。しかし、近ごろは業績が悪化しており、今般、次回の賞与の支給額を引き下げるか、不支給とすることを検討していますが、可能でしょうか。

(回答)

1 賞与支給の根拠
 賞与支払いの根拠は、個別の労働契約に求められ、労働契約、就業規 則又は労働協約で賞与についてどのように定められているかによって、賞与がいつ、いくら支払われるかが決まることになります。

2 賞与請求権の有無
 賞与について、労働協約、就業規則又は労働契約の規定により、支給時期及び支給等額が決まっている場合は、労働者は使用者に対し、賞与請求権を有することになります。
 また、長年、一定の支給時期及び支給額に基づいて賞与が支払われてきて、賞与支給の労使慣行が確立していると考えられる場合も労働者が賞与支給権を有すると考えられます。

3 賞与の引下げ・不支給の可否
 例えば、貴社の就業規則で、「賞与は毎年6月1日及び12月1日に月額基本給の2か月分を支給する。」と規定されていれば、労働者は支給時期が到来すれば就業規則の定めに基づき賞与請求権を取得することになります。
 したがって、貴社が支給額を引き下げるか又は支給しないと考えた場合、労働者の同意を得るか、就業規則の不利益変更をする必要があることになります。
 また、就業規則で、「賞与は、会社の業績等を考慮して毎年2回支給する。」と規定されていれば、労働者には賞与請求権が発生せず、貴社は、従前の支給額から減額して支給しても差し支えないことになります。
 さらに、就業規則で、「賞与は、会社の業績等を考慮して支給することがある。」と規定されていれば、貴社は不支給とすることも可能となります。

4 回答
 以上のように、貴社が、業績悪化を理由に、賞与の支給額を減額したり、不支給としたりすることができるかどうかは、賞与支給の根拠となっている労働契約、就業規則又は労働協約で賞与に関してどのように定められているかによって結論が変わることになります。
 したがって、貴社としては、この点を意識して、賞与制度を定める必要があるといえます。