自動車の修理業者における留置権について

(質問)
 当社は自動車の修理業者を行っています。
 しかし,修理を行ったのに,修理の依頼者が,修理代金を支払ってくれなかったり,逆に半年経っても自動車を引き取りに来なかったりという事態が起こってしまうことがあります。
 この場合,どのような措置がとれるのでしょうか?

(回答)

1 留置権とは 
 修理業者が自動車を預かって修理した場合,修理業者が修理の依頼者に対し修理代金債権を取得すると同時に,留置権という法廷担保物件を取得します。
 留置権とは,他人の占有物がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまで,その物を留置して債権者の弁済を間接的に強制する担保物件をいい,修理業者という措置をとることができます。
 したがって,修理の依頼者が,修理代金を支払わない場合には,自動車を留置して間接的に修理代金の支払いを強制することができるのです。

2 留置権者の権利 
 また,留置権者は,留置物について競売を申し立てることもできます。
 したがって,修理の依頼者が修理代金を支払わない場合や自動車を引き取りに来ない場合,修理業者裁判所に対し,預かった自動車の競売を申し立てることができます。  
 そして,競売による換価金が修理業者に交付された場合,修理業者は,修理代金債権と換価金返還債務とを相殺することにより,修理代金債権を回収することができます。
 もっとも,競売を申し立てるには,自動車について留置権を有することを証明する必要があります。

3 競売申立て手続 
 以上,預かり車を巡るトラブルを簡単に説明しましたが,トラブル解決のためには競売申立てなど法的専門知識が必要ですので,一度弁護士に御相談されることをお勧めします。