自社製品による健康被害が発生した場合の対応について

(質問)
 当社は、ダイエット器具の製造販売を行っています。当社の製品の購入者から連絡があり、当社製品のダイエット器具を使用中に、急に器具が熱くなってしまい、火傷をしてしまったとのことでした。
 当社はどのように対応すればよろしいでしょうか。

(回答)

1 欠陥商品リスク
 企業において、消費者が購入した製品により火傷等といった身体上の被害が発生すれば、損害賠償責任にとどまらず、安全な製品を製造できない会社といった致命的なレッテルを貼られるリスクが生じます。
 特に、さまざまな経営法務リスクの中でも、人の生命、身体への被害につながる製品の製造、サービスの提供を行っている企業は、リスクが現実化しないように最大限の注意義務と管理体制を構築していく必要があります。

2 原因調査
 貴社は、まず、購入者と面談を行い、貴社製品が原因で購入者に火傷が生じているのであれば、謝罪を検討すべきです。
 次に、貴社は、火傷の被害の原因が本当に貴社製品にあるのかという点と、貴社製品にどのような欠陥があったのかという点を、開発部門を交えて調査すべきです。
 また、貴社は、製品の欠陥について、設計上の欠陥、製造上の欠陥、指示・警告上の欠陥のいずれにあるのかの点についても、調査を行うべきです。

3 公表
 調査の結果、被害の原因が貴社製品にあることと、欠陥があることが明らかになれば、被害拡大を阻止するため、貴社製品による火傷の被害が発生していることを消費者に迅速に情報提供する必要があります。
 健康被害が現に生じている場面では、被害拡大の阻止が最優先課題ですし、情報提供が遅れると隠蔽を疑われます。調査未了の場合には、判明した事実と調査中の事実を分けて公表し、後者については判明次第公表するという対応を採ることで、不正確な情報提供による消費者の混乱を避けるべきです。
 貴社製品を購入した消費者を特定できれば、個別に連絡する方法も考えられますが、消費者一般に販売した製品の場合、公表が必要になります。
 公表の内容は、身体上の被害の内容・状況、その原因、今後の自社の対応等です。特定の製品についてのみ欠陥がある場合は、消費者が欠陥のある製品を特定できるよう、製品のロット番号や製造年月日を記載し、製品の写真を掲載する必要があります。
 記者会見を行う場合、想定問答を準備し、必要に応じて弁護士を交え、リハーサルを行った上で臨む必要があります。記者会見では、事実に基づいて回答することを心がけ、不確かな事項を推測で述べることは避けなければなりません。

4 監督官庁等への報告
 消費生活用製品安全法では、消費生活用製品(主として一般消費者の生活の用に供される製品で、食品衛生法が適用される食品、薬事法が適用される医薬品、化粧品等は除かれます(消費生活製品安全法2条1項)。)に関する重大製品事故を知ったときから10日以内の内閣総理大臣への報告が義務付けられています。

5 まとめ
 貴社は、製品の欠陥の原因を取り除き、火傷等の事故のリスクを回避するための再発防止策を早急に講じる必要があります。また、商品の使用に当たっての注意を呼びかけるとともに、商品交換、修理を行わなければなりません。
 加えて、今回の製品の欠陥の原因を分析して、再び同様な事態が生じないための体制の構築を検討すべきです。