「下請」というワードがなくなる!?下請法の改正

(質問)
 来年の1月に下請法の改正がなされるということを聞いています。
 今後気を付けていくべきことはあるでしょうか。

(回答)

1 下請法の概要
 最近のニュースで、複数件、長期間、金型の無償保管をさせていたという問題が取り上げられていたと思います。
 これは下請法に定める禁止事項である「不当な経済上の利益の提供要請」に該当するものであり、法律に従い、勧告がなされています。
 下請法は、他にも禁止行為として、「下請代金の支払遅延(60日以内)」、「下請代金の減額」「買いたたき」等が定められており、これらに違反した場合は公正取引委員会から勧告・指導がなされ、最悪の場合罰金となります。
 また、公正取引委員会のホームページで勧告された企業は公表されることになります。
 下請法が適用される対象の取引は、現状、双方の会社の資本金の額のみが参照されています。
 例えば図面の作成などの「役務提供委託」については資本金が5千万円を超える会社が、資本金5千万円以下の会社と取引する場合又は資本金が1千万円を超えて5千万円以下の会社が、資本金1千万円以下の会社と取引する場合が適用対象となります。

2 下請法の概要と具体的な法改正の内容
 令和8年1月から、下請法の改正がなされ、法律名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」となり、通称は「取適法(とりてきほう)」となります。
 つまり、「下請法」という呼称がなくなることとなります。
 合わせて、「下請」という概念も廃止され、それぞれ「下請事業者」→「中小受託事業者」、「親事業者」→「受託事業者」という概念が用いられるようになります。
 法律の内容についても、複数の改正があります。
 具体的には、代金額の協議をすることが受託事業者に義務付けられるようになりました。
 これは、物価高騰による仕入れ値の変動等が生じた場合等において、中小企業事業者が代金について交渉できる場を設けるために制定されたものです。
 他にも、支払方法として、手形払いが禁止になりました。
 さきほど説明した、法律が適用される対象も取引についても改正がなされています。
 改正後は、資本金の額のみでなく、契約当事者それぞれの従業員数によっても法律適用が認められることにもなりました。
 具体的には、300人を超える従業員を有する会社が300人以下の従業員を有する会社と取引する場合(「役務提供委託」については、100人を超える従業員を有する会社が100人以下の従業員を有する会社と取引する場合)にも、法律が適用される対象になりました。

3 他企業との協力関係で業界の更なる発展を
 今回の改正は、何といっても、これまで以上に買いたたきを防止し、業者間で、上下関係などない完全な協力関係を築くことに主眼が置かれています。
 現下請法、改正後の取適法について、従業員含めて詳細に周知したいということであれば研修をご依頼ください。