従業員の求めに応じて事業主都合退職にすることによるリスク

(質問)
 当社の従業員が自己都合退職を申し出てきましたが、雇用保険の資格喪失条項として「事業主都合による退職」にしてほしいと言ってきました。
 この従業員の言うとおりに、会社都合退職とすることに何か問題はありませんか。

(回答)

1 従業員が事業主都合退職を望む理由
 中小企業においては、上場企業とは異なり、退職に関するルールがやや曖昧なところもあるので、このように、従業員が事業主都合退職という形式での退職を求めてくることがあります。
 これは、従業員からすると、退職理由が自己都合よりも事業主都合である方が雇用保険の3か月の待機期間がないなど有利な扱いがなされるためです。

2 安易に応じるのはリスクが大きい。
 この場合、中小企業としては、従業員が退職すること自体に変わりはないので、あまり退職理由には注意を払わず、安易にこのような申し出を受け入れてしまうことも多いかもしれません。
 しかし、自己都合退職を事業主都合退職としてしまうと、後日退職した従業員から、会社都合による退職だから解雇と実質的に同じだとして「会社から解雇されたが、解雇は無効だ」と主張されるリスクがあります。

3 会社と従業員の「くい違い」のリスク 
 中小企業経営者の中には、退職した従業員がそのような不義理なことをするはずはないと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、経営法務においては、往々にしてそういうことがあります。というのは、従業員が必ずしも嘘つきという意味ではありませんが、会社が考えていることと従業員が考えていることは、双方の言葉のニュアンスや事実認識の相違から来る「くい違い」が生じ得るからです。 

4 回答
 貴社においては、後で解雇の有効性が争われるリスクを考えて、安易に自己都合退職を事業主都合退職とすることは慎むという対応が考えられます。
 しかし、そのようにすると、例えば、会社としては、退職してもらいたいと考えている従業員が退職の決意を翻すなどのリスクが生じます。
そこで、貴社は、会社都合退職という形式には応じるものの、退職する従業員から、「事業主都合により退職することにつき、その効力を争わない」旨の合意書を取って、後日の紛争のリスクをなくすという対応が望ましいと考えます。