休職期間満了により退職とすることのリスク

(質問)
 当社では、従業員がうつ病により休職し、その後復帰を申し出てきましたが、休職前の業務には耐えられないと考えています。
 その場合、当社は、復帰不可能としてその従業員を休職期間満了により退職とすることができるでしょうか。

(回答)

1 休職とは
 中小企業においても、従業員がうつ病を患うなどとして一定期間休職することが増えています。
 休職制度は、これを定めた場合には、就業規則に明記しなければなりません(労働基準法第89条第10号)。
 業務外の傷病を理由とする休職(傷病休職)の場合には、長期欠勤が一定期間に及んだときに休職となり、休職期間中に治癒し就労可能となれば復職しますが、休職期間中に治癒しなければ労働契約を終了させることとなります。

2 従前の業務が提供できない場合は 
 問題は、従業員が復職時に従前の業務を提供できるほどには回復していない場合に、休職期間満了として当然に退職にできるかどうかです。
 この点に関し、労働契約締結の時点で職種や業務内容を特定していない場合には、たとえ従前の業務が提供できないとしても、労働者の能力・経験・地位、企業の規模、業種、労働者の配置、異動の実情及び難易等に照らして、労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつその業務の提供を申し出ているならば、債務の本旨に従った履行の提供があるといえるとして労働者の賃金請求を認めた判例があります(最高裁判所平成10年4月9日判決)。

3 休暇期間満了時の企業の対応 
 確かに、労働契約締結の時点で職種や業務内容を特定していないと、このような結論になるのかもしれません。中小企業とすれば、限られた人員で最大の業績を上げるためには、採用時に職種はともかく、業務内容を特定するのはなかなか難しいかもしれません。
 したがって、復職時に従業員が一定の業務について業務の提供を申し入れている状況下では、休職期間の満了をもって退職という処理は大きなリスクがあります。

4 出勤と欠勤を繰り返す場合 
 当該従業員が出勤と欠勤を繰り返すなど、欠勤が継続したといえるのかが問題になる場合もあります。
 この場合、就業規則において、出勤と欠勤を繰り返す場合であっても欠勤期間を通算する旨の定め(「欠勤通算条項」等と呼ばれます。)があれば、かかる定めに基づいて休職命令を発令することになります。
 就業規則は、会社のさまざまなリスクに対応するためのいわば魔法の杖です。

5 回答 
 休職を命じていた従業員の復職可能性の判断に当たっては、休職前の業務への復帰は不可能であっても、当該従業員が他の業務へ従事することは可能か、業務軽減措置を採って休職前の業務に従事させることができないかなどを総合的に検討の上、判断する必要があります。
 ご質問のケースの場合、休職前の仕事は耐えられないだろうという理由のみで、退職扱いにするのは避けるべきです。