増加するネットトラブルー古物営業法とはー

(質問)
 インターネットを通じて盗品が出回るトラブルが多発していると聞きますが,何か法的な規制はされているのですか?

(回答)

1 増加するネットトラブル 
 最近はネットオークションが手軽に利用できるようになり,以前と比べて,盗品を比較的容易に売却できるようになりました。価値は高いものの流通ルートが限られていて,これまでであればなかなか処分できなかった仏像や骨董品などの品物も盗まれるケースが増えています。

2 古物営業法とは 
 ネットオークションも古物競りあっせん業として,古物営業法の対象となっています。
 まず,古物商許可が摘要される「古物」とは,古物営業法第2条で次のとおり定義されています。
 「一度使用された物品(中略)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。 」
 つまり一度でも使用されたか,使用されていなくても売買や譲渡が行われたもの(一般的には「新古品」などと言います)がこの許可の対象物です。古物をメンテナンスして新しく見せかけても同じです。

3 古物商許可が必要な場合 
 ではネットオークションで古物商許可が必要な場合はどのような場合かというと,古物を買い取って売る,古物を買い取って使える部品等を売る,古物を別の物と交換する,古物を買い取ってレンタルする,国内で買った古物を国外に輸出して売る等これらをネット上で行うには古物商許可が必要です。
 一方,自分の物を売る(自分で使っていた物,使うために買ったが未使用の物のこと。最初から転売目的で購入した物は含まれません。),無償でもらった物を売る,自分が海外で買ってきたものを売る(他の輸入業者が輸入したものを国内で買って売る場合は含まれません。)場合は古物商許可は必要ありません。
 簡単に言うと,オークションは「たまたま手元にあったのを売ります」ってスタンスだとOKなんです。大量に出品している人は,そういう言い訳ができません。

4 盗品を巡るトラブルに巻き込まれたら 
 そうは言っても膨大な商品の数に対して,十分に監視機能が働いていないのが現状です。
 では,実際に盗品を巡るトラブルに巻き込まれた場合,どう対処したらいいのでしょうか。
 例えば,ネットオークションで落札した商品が盗品であった場合,盗品であることを知って売買をすることは,盗品等関与罪(10年以下の懲役及び50万円以下の罰金)という犯罪になりますが,盗品とは知らないで入手したのであれば犯罪にはなりません。
 そして,たとえ盗品であっても,それを知らないで過失もなく入手したのであれば,「即時取得」と言って,購入した動産の所有権を取得することになります。

5 即時取得とは 
 即時取得とは,動産取引の安全を図るために認められたもので,①売買など有効な取引があること,②取引の対象が動産であること,③全主がその動産を処分する権限もなく,占有していること,④取得者が,平穏・公然・善意・無過失で動産の占有を始めたことを要件に,売買であれば,所有権の取得を認めるものです。
 例えば,AさんがBさんに時計を預けていたところ,BさんがCさんに対して自分の時計だと言って,売ってしまったような場合に,「即時取得」の要件を満たせば,Cさんはその時計の所有権を取得できます。
 ちなみに,動産といっても,登記・登録を必要とする物については,「即時取得」の対象にはなりません。
 買った商品が盗難であるときは,特別に,盗難に遭ったときから2年間に限って,本来の所有者は現在持っている人に対して,当該品物を返すように求めることができます。
 ただし,現在持っている人が,その品物を,競売・公の市場または同種の物を販売する商人から,盗品だとは知らないで買い受けた場合,買ったときの代金を弁償しなければ,元の持ち主はその品物を返してもらうことはできないと規定しています。
 付け加えると,お金をもらわずに自発的に品物を元の所有者に対して,先に渡してしまったとしても,渡した後に,元の所有者に対して代金の弁償を求めることができるということになっています。

6 自分の物が盗まれてネットで売りに出されていた場合 
 まず,ネットオークションを管理している業者に連絡を取った上で,警察に通報すべきです。ただ,品物は出品者の手元にあり,しかも,画面上の電子情報は改竄が容易なこともあって,ネットオークションに出品されている商品が盗品であると断定するのは難しいのが現状です。

7 迅速な対応が大切 
 その他,質屋,古物商が盗品を取得したときは,たとえ盗品であることを知らなかったとしても,元の所有者は,盗難から一年間,無償で返還請求できます。
 いずれにしても,窃盗のような刑事事件でも,盗まれた物の返還や代金の弁償といった民事上の問題でも,早めに弁護士に相談されることをお勧めします。