取締役の突然解任

(質問)
 当社は、取締役設置会社ですが、事実上、代表取締役Yのワンマン経営の会社で、取締役会は一度も開催されていませんでした。
 Yは、取締役のZを解任しようとして、株主総会を開催して、突然Zを解任する議題を提出して、Zを解任する決議を行いました。
 この決議は有効でしょうか。

(回答)

1 株主総会の権限の範囲
 まず、非公開会社とは、株式を証券取引所に上場していない会社のことではなく、発行するすべての株式にいわゆる譲渡制限が付いている会社のことです。
 招集権者は、原則として、各取締役(代表取締役を定めた場合は、当該代表取締役、3%以上の議決権を有する株主(招集請求を経る必要有り、会社法第297条第1項、第2項、第4項)です。
 招集通知は、株主総会の1週間前までに行うのが原則(同法第299条第1項)で、例外的に、定款で定めた場合は、1週間を下回る期間でも可能(同項かっこ書)です。
 招集通知には、株主総会の日時・場所・議題・提出議案を記載します。議題は、例えば、利益処分率承認の件など株主が招集通知を見て、株主総会で何が決議されるかが分かる程度で足ります。議案の要領は、役員の選任、報酬等重要な事項については、議案の要領を記載する必要があります。

2 招集手続の省略
 株主全員の同意があり、かつ、書面投票等を採用しない場合は、招集通知をせず、株主総会を開催することができます。

3 招集通知送達のリスク
 貴社においては、株主全員の同意があるなどの招集手続を省略することのできる事情がない以上、株主総会を開催するためには招集手続を経る必要があります。
 貴社は取締役会非設置会社であるため、招集通知は書面によっても口頭によっても可能であるところ(同法第299条第2項第2号参照)、貴社では、各株主に対し普通郵便による通知を行うという方法を選択しています。
 普通郵便という方法自体は、もちろん適法ですが、株主総会開催前に 株主全員に送付し、各株主が通知を了知したという証拠が残らないため、株主から招集通知を受け取っていないというクレームを受けるリスクが生じます。
 こういったリスクをヘッジするためには、普通郵便ではなく書留郵便を用いるなどして招集通知の事実を証拠化しておくことが必要です。

4 回答
 貴社は、Yに対して株主総会招集通知が送達されたことを立証しない限り、株主総会決議取消事由があることになるので、株主総会をやり直す方が望ましいといえます。
 経営法務の実践に当たっては、時には、引き返す決断も必要ということになります。