セクハラの申告に対する初動対応

(質問)
 当社では、女性従業員Yが上司の課長から何度もしつこく食事に誘われて困っている、ときどき肩を触れられたりして不快感を感じているというセクハラの相談を受けました。
 当社は、どのように対応すれば良いでしょうか。 

(回答)

1 セクハラの件数
 都道府県労働局雇用均等室に寄せられたセクハラの相談件数は、平成25年度は9,230件、平成26年度は11,289件、平成27年度は9,580件とのことです。
 しかし、これは、実際のセクハラ事案の氷山の一角と考えられます。
 実際、私は、中小企業からさまざまなセクハラの相談を受けたことがあります。

2 事業主が講じなければならない措置
 男女雇用機会均等法第11条では、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と規定されています。
 また、厚生労働大臣の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号、最終改正は平成28年8月2日厚生労働省告示第314号)では、事業主が講じなければならない措置として、次の事項が定められています。
 ①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発、②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応、④①から③までの措置と併せて講ずべき措置(以上、具体的内容は省略)。
 そして、事業主が上記の措置を十分に講じていない場合は、使用者責任(民法第715条)や安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負い(同法第415条、第709条)、また企業名の公表という制裁を受けることがあります(男女雇用機会均等法第30条)。

3 回答 
 貴社は、Yからセクハラに関する事実関係の調査を行った上で、加害者である上司にその内容を確認することになります。そして、Yと上司との間で事実関係が一致していれば、上司への懲戒処分を検討することになります。
 ただし、実際は、Yと上司との間で事実関係が一致しない場合が多くみられます。その場合は、5W1Hについて、Yと上司の言い分のどこがどのように食い違っているかを明確にして、一つ一つ事実関係を筋道、条理に基づいて認定していかなくてはなりません。
 ケースによっては、Yが嘘を言っている可能性もゼロではないことを踏まえ、予断を持たずに周りの関係者からも事実関係を聴取して、事実認定を行うことになります。
 そして、セクハラの事実関係が認められれば、上司の懲戒処分、Yの被害が深刻であれば会社と上司とで慰謝料の支払を検討することになります。