成年後見制度とは

(質問)
私の父親は最近、認知症の症状が出始めてきました。成年後見制度を利用したいのですが、どのような制度ですか?

(回答)

1 認知症の方が行った契約も有効?
 高齢者が,認知機能の低下により,不必要な契約を締結してしまうというケースはよく見られます。後になってご家族が契約に気付き,これを取り消そうとしても,業者が応じてくれず,結局,代金を支払わざるを得なくなったということもよくある話です。
 認知症の方が行った契約は,法的に有効といえるのでしょうか。
契約が有効に成立するには,「意思能力」が必要とされています。意思能力とは,自らの行為の利害得失を判断する能力のことです。一般的に,7歳から10歳程度の者の知力とされています。
そのため,認知症であっても,その方に意思能力があれば,契約は有効になります。逆に,意思能力がなければ,契約は無効となります。
仮に,認知症の方が締結した契約を無効にしたい場合,認知症の方に意思能力がなかったことを証明しなければなりません。この証明は,医師の診断書や締結した契約の内容,契約締結時の状況等,様々な資料を用いて行うことになりますが,過去のある時点において,意思能力がなかったことを証明するのは,非常に難しいと言わざるを得ません。
そこで,このような事態を避けるべく用いられるのが,成年後見制度です。

2 (法定)成年後見制度
 成年後見制度とは,精神上の障害等により,判断能力が十分でない者を保護すべく,その者の行為能力(法律行為を1人で確定的に有効に行うことができる資格)を制限し,これらの者が単独で法律行為をした場合にこれを取り消しうるものとした制度です。
成年後見制度には,次のような種類がございます。
①成年被後見人
成年被後見人とは,精神上の障害によって判断能力を欠くことが普通の状態である者をいいます。
後見が開始すると,成年後見人は,被後見人の財産行為全般について代理権を有します。被後見人が常時判断能力を欠く状態にある以上,財産行為全般において後見人の援助が必要と考えられるためです。
もっとも,被後見人の自己決定権に対する配慮から,被後見人は,日用品の購入その他日常生活に関する事項(以下「日常生活に関する事項」といいます。)については自由に行うことができます。
後見人は,日常生活に関する事項以外で被後見人が行った法律行為につき,取消権を有します。そのため,例えば,被後見人が,高額な貴金属等を購入したとしても,後見人はかかる売買契約を取り消すことができるのです。
②被保佐人
被保佐人とは,精神上の障害によって判断能力が著しく不十分である者をいいます。
保佐が開始すると,保佐人は,法律上定められた重要な財産に関する行為(以下「重要な財産行為」といいます。)につき,同意権を与えられます。つまり,重要な財産行為を被保佐人が有効に行うためには保佐人の同意が必要となり,保佐人の同意なくして当該行為を行った場合は,保佐人及び被保佐人はこれを取り消すことができます。
重要な財産行為は,全部で9個ありますが,主立ったものをあげますと,借財又は保証をすること,不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること(不動産の売買に限らず,不動産に抵当権を設定すること等も含まれる。),相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること,新築,改築,増築又は大修繕をすること等があります。
また,保佐人は,当然には被保佐人の代理権を有するものではありませんが,被保佐人の保護の必要性に応じて,保佐人に代理権を付与することもできます。
③被補助人
被補助人とは,精神上の障害によって判断能力が不十分である者をいいます。
補助は,後見や保佐の場合とは異なり,補助人に付与される同意権や代理権の範囲が法律で定められていません。そのため,補助の申立てを行う際に,補助人に付与してほしい同意権や代理権の範囲を具体的に示す必要があります。

3 成年後見制度の利用の仕方
成年後見制度を利用するには,本人(被後見人,被保佐人,被補助人となるべき者)の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをすることが必要です。申立ができるのは,本人,配偶者,四親等内の親族等です。
申立をするにあたっては,裁判所備付けの申立書に必要事項を記入するほか,戸籍やご本人の診断書等,いくつかの資料を添付する必要があります。
費用は,家庭裁判所に納める収入印紙や切手代等(1万円弱)のほか,精神鑑定の鑑定料が必要です。鑑定料は,ケースによって異なります。
後見等の開始を申し立てるときは,申立書に,後見人等の候補者を記載することができます。裁判所は,候補者が後見人等になることに問題がないと判断すれば,その者を後見人等に選任します。ただし,候補者が被後見人等のご家族である場合において,その者が後見人になることに反対する親族がいらっしゃったり,管理すべき財産が多額であったりすると,裁判所は,専門家を後見人に選任することが多いといえます。
後見人は,本人の意思を尊重し,かつ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら,財産を適正に管理し,例えば施設への入所契約等,必要な代理行為を行います。そして,それら代理行為の内容を記録すると共に,定期的に家庭裁判所に報告しなければなりません。これらの仕事は,ご家族も行うことができますが,事務の繁雑さや不正防止等の観点から,弁護士等の専門家に依頼されることをおすすめします。